マーケティングの本とやらは、敷居が高い。
かつての私はそう思っていた。
就職活動が始まると、周囲の学生の中には所謂「意識高い系」に進化する人もいる。
あくまでも「意識高い系」であって「意識高い」にはなれない彼らは、とにかく「どこかの専門用語でありそうなカタカナ言葉」を濫用していた。
そのなかには「アウトソーシング」「コンバージョン」「ナレッジ」などのマーケティング用語も多々あり、社会人となった今でもその言葉を聞いただけで不思議と彼らを思い出す。苦手意識を強く持っていた彼らを。
そんななかでこの本と出会った。
最初は「100円のコーラを1000円に?んなあほな」とタイトルに対して浅はかなツッコミを入れていたが、読み進めていくとまあ面白い面白い。
まず、この本はマーケティングが題材でありながら、小説形式で物語が進んでいき、その中でマーケティングについて分かりやすい事例を用いて自然な流れで説明していく。そのため、新書やビジネス書とはまた違った感覚でスラスラとマーケティングについて知ることができる。
また、物語としての観点からも完成度と満足度の高いものである。小説を読みたいという目的の人も楽しめる。マーケティングを知る目的の人には、導入としてなら満足できるがあくまでも初歩的なものであるので、これをきっかけに気になるテーマを見つけて専門書で深く知識を身に着けていくことをおすすめしたい。
今思い返すと、マーケティング用語をはじめとしたカタカナ言葉を頻発していた彼らは、その意味を理解していたのだろうか。的外れな場面で使っていたこともあったかもしれない。
その彼らが今、どのような職業についているかはわからない。しかし、きっと「意識高い系」からは抜け出しているのだろう。
マーケティングは、難しい用語が多々出てくる分野であるから、かつての私は敷居が高いと考えていた。しかし、マーケティングに関する分かりやすい事例は、意外と身近にあったりする。だから、身構えることもない。
私は、是非ともマーケティングに興味がない人にも読んでほしいと考えている。身近なものにだって、売る人の努力の物語があるから。